「ぼったくり男爵」ワシントンポスト紙のコラム日本語訳

日本時間で5月6日朝に、ワシントンポスト紙に掲載された、五輪開催反対記事がある。
「ぼったくり男爵」が出て来るあの記事だ。コレ、日本語訳の全文がないかな、と探したが見つからないので、自分で日本語化することにした。(できるだけ自然な日本語でかつ原文のママのニュアンスで)全文翻訳してみたが、コレがなかなかすごい。言葉がシャープでかつ攻撃的。一切のブレなく的確に敵艦に命中するミサイルみたいな文章だ。さらに気づいたのは、日本にありがちなメディアと違って、いわゆる「忖度」がゼロということ。これは読み心地痛快だ。
そしてもうひとつ。このコラムの内容がどの程度正しいのかという部分、ワシントンポストという権威紙であることを考えれば、おそらくはかなり正しい情報で構成されていると想定するが、仮に7~8割方程度の正しさだったとしても、このIOCという『貴族のフリをした悪徳行商人』、相当にタチが悪いゾ。騙されないように注意すべし!

日本は損失を解消し、IOCにこう伝えるべきだ。オリンピックでの略奪行為は他でやれ、と。

(原文タイトル:Japan should cut its losses and tell the IOC to take its Olympic pillage somewhere else)
原文:サリー・ジェンキンス(コラムニスト)
2021年5月5日午後6時(日本時間5月6日午前7時)ワシントンポスト紙に掲載

ぼったくり男爵と金メッキで飾られたIOC(国際オリンピック委員会)の偽善者たちは、どこかの段階で、日本を単なる踏み台として扱うと決めたようだ。だがそれは、オリンピックの開催国としての合意を行ったときに、日本が主権を放棄したということでは決してない。もしこの東京の夏のゲームが国益に対しての脅威となっているのなら、日本のリーダーたちはIOCに対し、略奪対象の国は他で探せ、と言うべきだろう。中止するのは大変だが、それは良薬となるのだ。

ぼったくり男爵ことIOC会長トーマスバッハ氏とその従者たちには開催都市を台無しにしてしまうという悪い癖がある。たとえて言えば、旅の王族がその地域にある小麦の束をすべて食い尽くし、残骸となる刈り株だけを残す…というような。そんなIOCは、このパンデミックのさなか、日本の民衆の72パーセントが15,000人の海外からのアスリートや関係者を歓待することに躊躇もしくは否定的という状況の中、どこで具体的に「五輪絶対開催」という傲慢な主張を取り下げことができるのだろうか?

そんなIOCのパワーの源はオリンピックの「ホスト契約」である、というのがその答えともなる。この契約を見れば、この横暴な組織がどういうもので、かつ開催国をいかに借金まみれにしてしまうかという仕組みが明らかになる。この契約書のうちの合計7ページが、ホストが提供しなければならない「医療サービス」に費やされている。これによれば、医療サービスは無料で提供されるものであり、オリンピック関係の資格証明を持つ人は誰であれ、地元の病院で医療サービスを受けられ、かつ専用の部屋が予約されているもの、となっている。東京の組織委員会の見積りでは、IOCの要求を満たすために、およそ10,000名の医療関係者が転用されてくる必要があるとしている。

先週の聖火リレーの期間中に、8人のオリンピック関係就労者がマスクを着用していたにもかかわらず、新型コロナウィルス陽性と診断された。ワクチン接種済みの日本国民は全体の2%以下に過ぎない。日本医療労働組合連合会の森田進書記長は、医療リソースを大量に引き抜こうとする試みに対し激しい怒りを表明している。彼はこう述べる「私は、患者と看護師の健康と生命へのリスクにもかかわらず、五輪の開催を主張することに激怒している」。

日本のリーダーは損出をただちに解消するべきだ。この取引はあと11週間で終わってしまう。オリンピックにはいつも理不尽なほどのコスト総額がかかり、理不尽な判断へとつながる。そして、このパンデミックのさなか、国際的メガイベントを主催することは全く理不尽な判断だ。悪貨の後に良貨を投じ続けることは同様に理不尽な行動でしかない。

この夏のゲームを推し進めていくかどうか、この点に関して、現時点で誰もが首をかしげてしまう理由があるのなら、それはお金の問題だ。日本はこの大会をホストするためにすでに25億ドル(訳者注:約2兆7千億円)近くを投資している。そして、これから15,000人のビジターをバブル式で守るためにさらにいくらのお金がかかるのだろう。毎日の検査やその他の手続き、セキュリティ確保や物資の運搬・搬入、様々なオペレーション…。そしてさらには大災害のコストが加わるとしたら…。

もし日本が契約を破った場合にはどうなるのだろう? IOCは何をするだろうか? 訴訟を起こす? もしそうするとしたら、どこの裁判所で誰が司法権を持つことになるのか。パンデミックで苦しみ、大きなストレスを抱える国家に対し五輪ゲームの強制開催を訴えるIOC…。そのような訴訟を起こすIOCの評判にはどんな影が落ちるだろうか。

日本のリーダーには実は自分たちが思うよりも強い力がある。最低でも、たとえば五輪ゲームの開催を制限するとか遅らせるなどといった、開催者を守るための譲歩を最大限に引き出すポジションにいることは間違いない。

東京の苦境は、深く、長い期間に渡り続いているオリンピックの病理の表出である。このゲームに巻き込まれる全ての人々にとって、もはやこれは痛みと極限までの疲労を伴うギリギリ状態での権利の行使でしかなく、こうした条件を受け入れることのできる国家の数は益々少なくなっていくだろう。強欲さと激増するコストは、オリンピックを究極の災厄を招くイベントへと変異させてしまう。オックスフォード・ビジネス・スクールによって9月に発表されたレポートではこう述べられている。IOCはオリンピック開催に関し一貫してホスト国を間違った方向へと導いてきた。例としてこのようなものがある:偶発的な事象に対応するための予測できない出費に関しては9.1パーセントの費用を準備するのが適切である、とIOCは装ってきた。しかし真実は以下の数値だ。

夏季オリンピックにおける実際の平均超過金額は213パーセントである。

IOCがそうしたリスクを小さく見せかけるのには理由がある。すべての略奪行為が明らかになるにつれ、一緒にビジネスをしたいと望む国の数がどんどん減ってきているからだ。

IOCは意図的に超過金を推奨している。利益という目的のために、IOCは複雑精巧な設備やイベントを実現するよう強要する。そしてその利益のほとんどはIOCのものとなり、費用はすべてホスト側の支払い保証付きの負担となる。IOCはサイズや設計・デザインの基準を定め、ホストに対しさらなる費用をかけることを要求する、仮により良い別の判断が存在したとしてもそれは関係なしに…。そして、ライセンス関係の利益と放映権料はIOCがしっかりと握っていることに揺らぎはない。東京五輪の最初の予算は70億ドル(訳者注:約7,600億円)だったが、今ではその4倍に膨れ上がっている。

オックスフォード・ペーパーの「Regression to the Tail: Why the Olympics Blow Up」(最後部への回帰:なぜオリンピックは肥大化するのか)では、著者のBent Flyvbjerg氏、Alexander Budzier氏、Daniel Lunn氏が観察したところ、五輪のコストの増大ぶりという点において、国家のすべての建設プロジェクトが小さく見えてしまうほどの効果があるとしている。これは比較対象がダム建設プロジェクトやトンネル採掘プロジェクトであったとしても同じことだ。複雑さと費用は常に上昇を続け、プランニングのための期間は非常に長い(7~11年)。これにより不確実性がとても高くなり、インフレからテロリストの攻撃に至るまであらゆる種類の影響を受ける可能性が出て来る。「つまりは大きな黒鳥が飛びぬけるようなリスクがある」(訳者注:とんでもないことが突然に起こり得るという意味)2016年に開催されたリオ五輪では、ひどい経済停滞の真っ只中であったにも関わらず、当初の予算に対し352パーセントの費用がかかっている。この費用の高騰は決して偶然に起きたのではなく、「システマチック」なものなのである。

「IOC自身が本当のコストに関して思い違いをしているために9.1パーセントの偶発性コスト増大で充分と言っているのか、あるいは、意図的に不都合な真実から目を背けてそう言っているのか…。たとえどちらであったとしても、開催都市や開催国を間違った方向へ導いていることに違いはない。」そう彼らは述べている。

そういったことが理由で、IOCと関りを持って行動していける政治リーダーとしては、世界にはもはや2人の悪政者しか残っていない。ウラジーミル・プーチンと習近平だ。この2人なら強制的に労働力を徴用することができるし、名声のために際限なしにコストをかけることができる。過去20年間で、他のホスト候補たちは干上がってしまった。そうした都市の中でIOCに対して上手に「NO」を言えたのは以下の都市である:バルセロナ、ボストン、ブタペスト、ダボス、ハンブルグ、クラクフ、ミュンヘン、オスロ、ローマ、ストックホルム、そしてトロントだ。ロサンゼルス市の市長Eric Garcetti氏は2028年のオリンピックでのIOCからの格別の譲歩を力ずくでもぎ取ったという実績があるが、彼はこう言う。「ほとんどの都市はオリンピックに対して二度と『YES』を言うことはないだろう。正しいビジネスモデルが提示されない限り」。これは例の男爵たちの暴飲暴食が招いた事態と言わざるを得ない。

こういったすべてのことは、日本のリーダーたちに本来の力を取り戻させ、彼らと国民のためのベストな選択を行うための助けとなるべきものである。オリンピックが国際観光の収益源として適切な役割を演じられるときには、おそらく支出のうちのいくらかは適正化されることになるだろう。だが、現状の日本でのオリンピックのコストの問題は、単なる財政的な問題に留まるものではなく、もっと深いものだ。もしもIOCがニセモノの公国であるということを確認する場所や機会があったとしたら、きっとこう認識できるだろう。堕落した方法で手に入れた汚れたキャッシュの受け皿を持つ行商人、それが高貴な貴族の振りをするIOCの正体である、と。IOCは、参加国からの一時的な承認以外には、何のパワーも持っていない。日本はIOCには借りがない。開催中止は痛みを伴うだろうが、それは浄化への道だ。

日本語訳:たじまよしゆき
※訳者注:「男爵」(英語では「baron」)とは貴族に対する呼び方のひとつではあるが、実際に英国では貴族の中でも最下級の位の者を指す言葉である。

★ワシントンポスト紙の原文コラム記事は以下
https://www.washingtonpost.com/sports/2021/05/05/japan-ioc-olympic-contract/

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